最近では在宅ワークを始める人が増え、パソコン1台さえあればフリーランスとして働ける環境も整ってきました。フリーランスになるにあたって、「パソコンの購入代金を経費にしたい」と考えている方も多いのではないでしょうか?
パソコンは金額の大きい物品のため、正しく計上することで節税につなげることができます。本記事では、フリーランスがパソコンやパソコンの周辺機器を購入した場合の経費について解説します。
正しく経費計上を行うことで節税を行いつつ、確定申告の際に手間取ることがないよう、事前に知識を深めておきましょう。
Contents
パソコンの金額によって処理の仕方が異なる

フリーランスがパソコンを購入した場合、金額によって『消耗品』か『減価償却費』に分かれます。具体的には、10万円未満かどうかによって異なります。
購入したパソコンの金額に応じて経費計上しましょう。以下で詳しく解説します。
10万円未満のパソコンの場合
まず、10万円未満のパソコンは、『消耗品』として一括で会計処理することができます。この場合、他の物品と同じ方法で経費とすることができるので、わかりやすいですね。
しかし、10万円以上のパソコンは『固定資産』とみなされるため、購入した年に全額を経費計上することはできません。
固定資産とは1年以上にわたり使用する目的で所持する資産のことで、長期的に使用する物品は数年に分けて少しずつ経費計上していきます。この方法を『減価償却』と言います。
減価償却費は何年間で全額支払うのか?
パソコンの場合は、サーバーかどうかによって減価償却する年数が異なります。
- サーバー用・・・5年間
- サーバー用以外・・・4年間
上記は国から定められている年数で、『法定耐用年数』と言います。
なお、パソコンの形状(デスクトップやノートパソコン、タブレット等)による年数の区別はありません。
(参考:主な減価償却資産の耐用年数表)
10万円以上で20万円未満のパソコンの場合
10万円以上、20万円未満のパソコンを購入した場合は、「一括償却資産」「少額減価償却資産の特例」「減価償却」のどれかで会計処理をします。
一括償却資産処理
耐用年数に関わらず3年で償却する方法です。「一括」と名前に付いていますが、一回の確定申告で全額支払うのではなく、3年に分けて計上します。
白色申告・青色申告のどちらでも処理が可能で、購入した年の経費を少しでも多くして、できるだけ早く償却したい場合に有効です。
少額減価償却資産の特例処理
青色申告をしているフリーランスの場合、「少額減価償却資産の特例」制度を使うことで30万円未満のパソコンを一括で経費計上できるようになります。
この制度は10万円以上の物品でも、30万円未満かつ年間300万円までの場合は全額その年に経費計上できる制度となっています。
ただし、この制度の対象者は青色申告をしているフリーランス・1000人以下の中小企業で、資本金・出資金が1億円以下でなければなりません。また、確定申告書とは別に明細書などの添付が求められます。
なお2023年5月現在では、少額減価償却資産の特例の適用期間は2024年3月31日までとなっています。こちらの適用期間はこれまでも2年で延長されているため、2024年以降も延長の可能性があると考えられるでしょう。
(参考:少額減価償却資産の特例)
減価償却処理
購入したパソコンを使用開始した月から1ヶ月単位で償却する方法で、通常の減価償却の会計処理となります。減価償却処理には『定率法』と『定額法』の2つの方法がありますが、フリーランスの場合は原則、定額法を用います。
- 定額法・・・毎年同じ額を償却処理する方法です。法定耐用年数を過ぎても物品自体は資産として残るため、最終年度は「1円」を会計上残して処理します。
- 定率法・・・定率法の場合は、1年目の償却率を「0.5」として半額を計上する方法です。2年目からは残りの年数で割った金額を支払います。定額法と同じように、最後の年は会計上「1円」を残して処理します。
20万円以上30万円未満のパソコンの場合
20万円以上30万円未満のパソコンも固定資産となるので、10万円以上で20万円未満のパソコンと同じように経費計上します。
30万円以上のパソコンの場合
30万円以上のパソコンを購入した場合、「一括償却資産」「少額減価償却資産の特例」などの会計処理はできません。通常の減価償却で会計処理します。
パソコンの周辺機器も経費として計上できる

パソコンはフリーランスとしての仕事に不可欠な道具ですが、その使用には周辺機器も欠かせません。ここでは、パソコンの周辺機器とそれらの経費計上について解説します。
パソコンの周辺機器とは?
周辺機器とは、パソコン本体以外に付属する機器のことを指します。これには、プリンターやスキャナー、外付けハードディスク、モニター、キーボード、マウスなどが含まれます。
これらの機器は、仕事を効率的に行うために必要なもので、フリーランスとしての業務に直接関連しているため、経費として計上することが可能なのです。
各周辺機器の経費計上の方法
パソコンの購入と同時に、マウスやキーボード、プリンターなどの周辺機器を購入する方も多いと思います。それら周辺機器の経費計上方法は、パソコンと同時に使用するものかどうかで異なります。
例えば、マウスやキーボード、パソコンの増設メモリなどはパソコンと共に使用する必要があるため、パソコンの購入金額と合算して計算します。合算した結果10万円未満なのか、10万円以上になるのかなどで計上方法が変わってきます。この計算方法については、後ほど詳しく解説します。
一方、プリンターや外付けハードディスクなどパソコンと別でも使用できるものに関しては、パソコンの金額には含めず、それぞれ単体の金額で計上を行います。これらの周辺機器は、たとえパソコンと同時に購入したとしても、それぞれの金額が10万円未満であれば「消耗品費」として経費計上することができます。
パソコンの減価償却の計算方法

ここからは、パソコンの減価償却の計算方法について解説します。もし、パソコン以外にマウスやモニターなどのパソコンを使用するために必要な周辺機器を購入した場合は、それらを合算した金額で計算します。
取得価額=購入代価(商品の購入代金)+付随費用(送料や振込手数料など)
なお、税込・税抜のどちらで計算するかは納税者の経理方式に合わせます。税込で処理するのであれば消費税を含み、税抜きで処理するのであれば消費税は含まずに計算しましょう。
取得価額がわかったら、次は償却率と使った月数で計算していきます。
ここでは例として、20万円のサーバー用以外のパソコン(法定耐用年数は4年)を7月に購入したと仮定します。(計算上わかりやすいように、マウスやモニターなどは含みません)
減価償却の計算方法は、
取得価額 × 償却率 ÷ 12 × その年の使用月数
となり、金額と年数を当てはめると以下のようになります。
1年目・・20万円×0.25÷12×6ヶ月=25,000円
2年目・・20万円×0.25÷12×12ヶ月=50,000円
(※4年の資産の償却率は4分の1で0.25となる)
上記のように、1年目は25,000円、2年目からは50,000円を償却していくことになります。また、この場合は1年目に6ヶ月しか使用していないので、最終年度に残りの6ヶ月を支払うことになります。
ソフトウェアの減価償却について
もしパソコンと別にソフトウェア(例えば、ウイルス対策ソフトなど)を購入する場合は、それぞれ別で減価償却をおこないます。ソフトウェアは『無形固定資産』に該当し、法定耐用年数は5年と定められています。
そのためソフトウェアを購入したら、他のパソコン周辺機器と同じように合算するのではなく、個別に計算して減価償却する必要があります。
サブスクリプションサービスの経費計上について
サブスクリプション型のソフトウェア(例えば「Adobe Creative Cloud」や「Microsoft 365」など)についても、事業で使用するものであれば毎月の経費として計上することができます。
なお、1年を超える期間分の費用をまとめて支払う場合は、利用開始月に一括で費用を計上することはできません。この場合は、来年以降の分は前払費用として計上しておき、来年になってから前払費用を当該の勘定科目に計上する必要があるため、注意しましょう。
分割払い・中古・リースでパソコンを入手した場合

業務で使用するパソコンを購入する際、必ずしも「新品パソコンを一括払い」とは限りません。ここでは、以下の3つの購入方法にわけて、それぞれどのように経費計上するとよいのかを紹介していきます。
- 分割払い
- 中古パソコン
- リース
分割払いでパソコンを購入した場合
新品のパソコンを購入する場合、値段が高かったり計画的に支払いたかったりと、分割払いを選択することもあるでしょう。
分割払いで購入したパソコンも、一括払いと同じように全額を経費として計上します。ただし、分割払いは資産ではなく「負債」として捉えられるため、帳簿の仕訳方法が一括払いとは異なります。
また、カードで支払う場合は、口座から代金引かれる前の状態=「未払金」で仕訳しておき、払った分だけ未払金を取り消していく形となります。
中古パソコンを購入した場合
中古パソコンも、10万円以下であれば一括で経費計上が可能です。多くの中古パソコンは10万円以下で販売されているため、基本的には消耗品費として計上するとよいでしょう。
ただし、10万円以上の中古パソコンを購入した場合は、減価償却費となります。減価償却のやり方そのものは変わりませんが、耐用年数の計算の仕方が異なるので注意しましょう。
中古パソコンの減価償却の計算には、「経過年数」と「法定耐用年数までの年数」を使用します。これらを足して減価償却の計算式に当てはめる『耐用年数』を算出します。
【中古パソコンの耐用年数の計算式】
(耐用年数 – 経過年数)+ (経過年数×20%)
【具体例】
2年経過している中古パソコンの場合、以下のように耐用年数を計算します。
(4年 – 2年)+ (2年×0.2)=2.2年
1年未満(小数点以下)は切り捨てとなるため、この場合は2年として減価償却をおこなうことになります。
リース契約でパソコンを取得した場合
パソコンをリース契約している場合、「どのような契約でリースしているのか」によって計上方法が異なります。リース契約では、以下の3つの仕訳で経費計上することになります。
所有権移転のファイナンス・リース取引
こちらはリース期間が終わったあとに資産所有権が借り手に渡る取引です。分割払いと同じような捉え方になるため、減価償却も購入時と同じ計算方法を用います。
所有権移転外のファイナンス・リース取引
こちらはリース期間が終わったあと、貸している会社や所有者に権利が戻る取引です。リース契約期間が終了すると元の所有者に戻るため、リース期間で減価償却します。
オペレーティング・リース取引
こちらは上記2つのリース取引に該当しない取引となります。資産としての扱いではなく、支払ったリース代金は減価償却費としてすべて経費計上できます。
消耗品や修理費用も経費に計上できる
パソコンを使用して事業を行う上で、定期的に交換する必要のあるものや、故障して修理が必要になるケースも発生してくるでしょう。
ここでは、それらの経費計上方法について解説します。
パソコンの消耗品とは?
パソコンの消耗品とは、使用にともなって消耗し、定期的に取り替える必要があるアイテムのことを指します。
例えばマウスやキーボード、PC自体のバッテリー、プリンターのインクカートリッジやトナーなどが含まれます。
消耗品や修理費用の計上方法
上記で紹介したパソコンの消耗品は、それらの購入時に全額を経費として計上することができます。
また、パソコンの修理費用についても、修理が必要となった原因が業務利用に起因するものであれば、全額を経費として計上することが可能です。ただし、修理費用が特に高額である場合やプライベート利用が原因で修理が必要となった場合などは、経費として計上できない場合がありますので、注意が必要です。
フリーランスが業務とプライベートでパソコンを併用している場合

フリーランスがパソコンを経費にするとき、もう1つ注意したいのが「プライベートにも使っているかどうか」です。もし業務とプライベートの両方で使うパソコンを購入した場合、経費は業務で使う分しか計上できません。
ここで用いるのが『家事按分』です。家事按分は事業とプライベートの両方で使用するものに用いられる考え方で、事業で使用する割合を算出し、それを使って経費計上することを指します。
パソコン以外にも自宅で作業している場合は家賃や光熱費、スマホ、通信費なども家事按分の考えを用いて割合を出していきます。
なお、パソコンの場合は業務をおこなっている日数や時間をもとに計算する方法が一般的です。
購入したパソコンの領収書はしっかり保管しておこう!

フリーランスが仕事に必要な物品代を経費として計上したい場合、購入時に受け取る領収書を保管しておかなければなりません。領収書は「購入した物品の証拠」となるもので、何らかの不備があった場合に経費として認められないことがあります。
ここまで説明してきたようにパソコンは減価償却資産となるケースもあり、耐用年数や償却開始日などの正当性を証明できなければ、税務署の調査を受ける可能性があります。
場合によっては領収書だけでは書類不十分とみなされることもあるので、請求書や納品書などもあわせて保管しておきましょう。
フリーランスの領収書については、こちらの記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
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まとめ
フリーランスがパソコンを購入した場合、10万円以下であれば購入した年に全額経費として計上できます。
しかし、10万円を超える場合は資産としての扱いになるため、減価償却として毎年処理していくか、一括償却資産や少額減価償却資産の特例などで処理していくことになります。
経費の計算は難しく感じることも多いですが、正しく計上して節税につなげましょう。
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