会社員として働いていると、健康保険などの手続きは会社がすべておこなってくれますが、フリーランスエンジニアとして独立すると、すべて自分でおこなわなければなりません。
フリーランスエンジニアが加入できる健康保険にはいくつかあり、ご自身の状況に合わせて選ぶことで安くおさえることができます。
本記事ではフリーランスエンジニアが加入できる健康保険の種類や、保険料のおさえ方を解説します。万が一の備えとして知っておきたい民間の保険についても紹介しているので、ぜひ最後までご覧ください。
Contents
フリーランスエンジニアが加入できる健康保険の種類

そもそも健康保険とは社会保険の一部で、病気やケガにより医療機関を利用した際に支払った金額の一部を公的機関が負担してくれる「公的医療保険」の名称です。
また、「健康保険」は会社員が加入する保険のことで、フリーランスや個人事業主は「国民健康保険」に加入するのが一般的です。
では、フリーランスになると国民健康保険しか加入できないのか?というと、そうではありません。
確かにフリーランスや個人事業主の多くは国民健康保険に加入していますが、実は状況によって他の選択肢をとる方がよいケースもあります。
ここでは、フリーランスエンジニアが加入できる健康保険を3つ紹介します。
国民健康保険
国民健康保険はフリーランスをはじめ学生や年金受給者など、会社員以外の人が加入する健康保険で、市区町村が運営しています。
保険料は基本の「医療分保険料」と後期高齢者のための「支援金保険料」を合わせた金額で、さらに40歳以上60歳未満の人には「介護保険料」も合算されます。
また、市区町村ごとに基本の保険料は異なり、さらに世帯ごとの被保険者数・収入・年齢によって金額が変動します。
加入方法
国民健康保険に加入するには、退職した翌日(社会保険の失効日)から14日以内に手続きをする必要があります。
社会保険から国民健康保険に加入する場合、
- 健康保険資格喪失証明書
- 身分証明書
- 印鑑
を用意し、市区町村の保険業務担当窓口に届け出ます。(必要書類は市区町村によって異なる可能性があります。居住地の役所でご確認ください。)
会社の社会保険を任意継続する
任意継続とは、勤め先の会社の保険をそのまま継続できる保険の仕組みのことです。退職日までに2ヶ月以上勤務先の社会保険に加入していれば、2年間はそのまま加入しておくことが可能です。
任意継続する大きなメリットは、一定の要件を満たせば扶養家族の保険料の負担がなくなることです。そのため扶養家族が多い人ほどお得になり、家族分の保険料を負担しなければならない国民健康保険より安くなるケースもあります。
ただし、会社が折半して負担してくれていた本人分の保険料が全額負担になることと、最長で2年間しか加入できないことがデメリットとなります。また、任意継続は滞納に厳しく、1日でも支払いが遅れると脱退させられるため注意が必要です。
加入方法
任意継続する場合は、退職日から20日以内に会社員として加入していた健康保険組合に必要書類を提出します。
また、扶養家族を申請する場合は、続柄の記載された住民票や戸籍抄本(在職中と変わらない場合は省略)や、年収が確認できる所得証明書などが必要になります。
健康保険組合
健康保険には冒頭で紹介した市区町村が運営する国民健康保険のほかに、職業別に運営されているものもあります。
具体的には、美容師や建築士、薬剤師などの業種によるもので、IT系のフリーランスであれば「文芸美術国民健康保険組合(文美国保)」に加入できる可能性があります。
文美国保は文芸や美術、デザイン関係で働く人を対象とした保険組合で、原則エンジニアは対象ではありませんが、Webデザイン系をメインに業務している人は加入できるケースもあります。
文美国保を利用する大きなメリットは、収入による保険料の変動がないことです。市区町村が運営する国保は収入によって保険料が変わりますが、文美国保は固定方式を採用しているため、高収入であればあるほどお得になります。
加入方法
文美国保に加入するには、組合加盟団体に所属する必要があります。加入には審査があり、許可が下りた場合のみ、申し込みの翌月分から保険証が発行されます。
詳細については文美国保の公式ホームページをご覧ください。
フリーランスエンジニアが保険料を安くおさえる方法

フリーランスエンジニアになると保険料が全額負担になるため、月々の支払額も1年を通して見れば大きな金額となります。
ここでは、保険料をできるだけ安くおさえる方法を紹介します。
健康保険組合に入る
上記で解説した文美国保は保険料が一定のため、収入が多い人ほど保険料を安くおさえられます。
文美国保の令和3年度の文美国保の保険料は月21,110円で、家族は月11,600円(1人あたり)、また、40〜64歳は介護保険として月4,000円が加算されます。
自治体の計算や介護保険の有無により金額が変わるため一概にはいえませんが、目安として年収300万円以上の場合は市区町村が運営する国保より安くなると考えられます。該当する人は検討してみるとよいでしょう。
国民健康保険料が安い自治体を探す
市区町村が運営する国民健康保険は、実は同じ県内でも自治体によって保険料が異なります。保険料の差が顕著な自治体では、なんと3倍近くも違うケースもあるほどです。
高齢化が進むなかで加入者が支払う保険料は欠かせない財源となっており、2018年の法改正により平準化を図ってはいるものの、現実的には難しいのが現状です。
そこでフリーランスエンジニアとして働く強みの1つである、「どこにいても仕事ができる」という部分を生かし、保険料が安い自治体に引っ越すのも1つの方法です。
家族の扶養に入る
家族が正社員として働いていて、会社で健康保険に加入していれば、その扶養家族として加入することもできます。
ただし、扶養として入る本人の年収が130万円未満で、なおかつ被保険者(家族)の年収の半分未満という条件があります。なお、手続きは被保険者である家族の職場でおこないます。
所得が少ない場合は減免制度を利用する
フリーランスエンジニアとして独立したものの、思うように案件が獲得できず収入が増やせない人もいるかもしれません。
そのような場合、所得が一定金額以下の世帯に適用される、「国民健康保険料を減免する制度」の利用を検討してみましょう。(減免とは、負担を軽くしたり免除したりすることです。)
定められた要件を満たす必要はありますが、生活が不安定で保険料の支払いが難しい場合は市区町村の役所に相談してみるとよいでしょう。
労災保険の加入も検討しよう

国民健康保険は業務外でのケガや病気に適用されますが、勤務中・業務中は対象にはなりません。そこで利用したいのが労災保険です。
労災保険は通勤中や業務中の事故や病気への保険給付をおこなうもので、2021年9月よりITフリーランスも労災保険に特別加入できるようになりました。
特別加入が可能になった人の対象範囲は広く、エンジニアとして設計や管理、監査などさまざまな職種に該当します。具体的な対象者は以下のとおりです。
- ITコンサルタント
- プロジェクトマネージャー
- プロジェクトリーダー
- システムエンジニア
- プログラマ
- サーバーエンジニア
- ネットワークエンジニア
- データベースエンジニア
- セキュリティエンジニア
- 運用保守エンジニア
- テストエンジニア
- 社内SE
- 製品開発/研究開発エンジニア
- データサイエンティスト
- アプリケーションエンジニア
- Webデザイナー
- Webディレクター
など
(出典:ITフリーランスの皆さまへ)
なお、申請手続きは「一般社団法人 ITフリーランス支援機構」が設立した、ITフリーランス支援機構全国労災保険センターの公式サイトが窓口となっています。
フリーランスエンジニアが加入できる民間の保険とは

フリーランスエンジニアになると、業務や収入に関するすべてのリスクを自分1人で負う必要があります。国民健康保険や労災保険は健康に関する内容が対象となるものの、それ以外の部分はカバーされません。
そこで利用したいのが民間の保険サービスです。業務や収入に関する民間の保険サービスに加入しておくことで、万が一のときに補償を受け取ることができます。
ここでは、健康保険以外の代表的な保険である、賠償責任保険と所得保障保険について解説します。
賠償責任保険
賠償責任保険とは、なんらかの理由によって取引先に損害を与えてしまい、損害賠償を請求されたときに対して補償してくれる保険です。
会社や組織に所属しているITエンジニアであれば雇用主である会社が対応してくれますが、フリーランスの場合、クライアントから訴えられれば自分で損害賠償額を支払わなければなりません。
トラブルの規模や内容にもよりますが数百万以上請求されるケースもあり、リスクに対する備えは必要不可欠となります。フリーランスエンジニアが賠償責任を問われるケースとしては、以下のようなことが考えられます。
- 情報漏洩
- 納品物の瑕疵
- 納期遅延
- 著作権侵害
など
プロジェクトに参画する前に業務委託契約書をしっかり確認することはもちろんですが、必要であれば損害賠償に関する保険に加入しておきましょう。
フリーランスの損害賠償保険で有名なサービスには「FREENANCE(フリーナンス)」や「フリーランス協会」などがあります。
たとえば、フリーランス協会の「ベネフィットプラン」は年会費1万円で最大10億円までの補償を受け取ることが可能になります。
このような賠償責任保険に加入しておくことで自分自身はもちろん、クライアントにも安心感や信頼性をアピールできるというメリットも生まれます。
所得補償保険
所得補償保険は、病気やケガにより働けなくなったときに保険金が受け取れる保険です。なんらかの理由で就業不能になった場合、民間の保険サービスを利用しておくことで保険金が受け取れるようになります。
「病気やケガなら労災保険で十分では?」と思う人もいるかもしれませんが、所得補償保険のなかには日常生活すべてのシチュエーションや旅行中(国内外問わず)に対応してくれるサービスもあり、あらゆる場面に備えることができます。
労災保険は業務中に限られた保険ですが、所得補償保険は業務以外でも保険金の支払い対象となるため、まさに”万が一”に備えられる保険といえるでしょう。
民間の保険サービスには先ほど紹介したFREENANCE(フリーナンス)やフリーランス協会などがあり、商品やプランによって支払い対象になる期間や内容が異なります。
どのような保険がよいかは人によって違うため、サービスや商品をしっかり調べて検討しておきましょう。
保険や税金のサポートを受けたい人はエージェントを利用するのがおすすめ
ここまでフリーランスエンジニアが加入できる保険について紹介しましたが、「自分1人で考えるのは不安」という人も多いでしょう。
また、フリーランスになると保険以外にも、税金などの事務作業もすべて行わなければなりません。保険や税金の事務作業は思っているよりも多く、通常業務に加えて負担が大きく感じることもあると思います。
もし業務以外の事務作業に不安や負担を感じる場合は、サポートしてくれるエージェントを利用するのがおすすめです。フリーランスエンジニア向けのエージェントには、福利厚生が充実していたり、税金などの事務作業のサポートをおこなったりするサービスがあります。
エージェントでは、専任のコンサルタントが案件獲得から条件の交渉、契約などの面倒な手続きをすべて代行してくれるため、収入を安定させたい人にも最適です。
とくにおすすめのBizlinkでは、高単価案件やフルリモート案件が充実しており、さらにIT協会と提携して各種フリーランス向けの税金サポートをおこなっています。
新規登録はこちらから、必要事項を入力するだけで完了します。「エージェントを利用したことがない」「どのエージェントを利用すればよいかわからない」という人も、ぜひチェックしてみてください。
まとめ

今回紹介したように、国民健康保険に加入する人が多いものの、任意継続保険や文美国保などの選択肢もあり、個人の状況によって最適な公的医療保険は異なります。
日本で生活する以上は必ずどれかの健康保険制度に加入する必要があるため、広い知識を持って賢く選択しましょう。
どのような職業でも「体が資本」であることには間違いありませんが、フリーランスになると会社員よりも健康に気をつけなければなりません。民間の保険サービスなども利用しながら、万が一に備えておきましょう。
また、保険や税金に関して「誰かに相談したい」という人は、サポートが充実したエージェントの利用も検討してみてください。
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