会社員エンジニアとして働いていると、請求書を発行することはあまりないと思います。しかし独立してフリーランスになれば、携わった業務への請求書を発行し、クライアントに送らなければなりません。
他の業種と大きく変わる点はありませんが、「どの業務に対する報酬がいくらなのか」をしっかり記載し、源泉徴収の有無なども事前に確認しておく必要があります。
本記事では、フリーランスエンジニアの請求書の書き方や注意点を詳しく紹介します。インボイス制度が導入されたあとの請求書についても解説しているので、ぜひ最後までご覧ください。
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フリーランスエンジニアにおける請求書とは

フリーランスエンジニアにとって請求書は、「自分が報酬を受け取るとき」と「自分が請求されるとき」の2パターンあります。自分から請求書を発行してクライアントに送付する大きな目的は2つあります。
1つ目は、どの業務に対していくらの報酬が発生するのかを提示するため、2つ目は「報酬を請求した」という証明書類になるためです。ただし、請求書の発行は法律で規定されているわけではありません。
まれではありますが、請求する側と請求される側の了承があれば、請求書を発行しない取引もあるでしょう。また、フリーランスエージェントを利用した場合、請求書作成のフォーマットが用意されていることもあります。
逆に、自分が請求される立場の場合は確定申告の際に取引の証拠になるので、受け取った請求書は捨てずに保管しておきましょう。
フリーランスエンジニアが請求書を発行するタイミング
一般的には、納品後もしくは納品と同時に請求書をクライアントに送付します。中長期のプロジェクトで毎月請求書を発行する場合は、毎月同じくらいの日にちに発行・送付するのが良いでしょう。
なお、着手金など業務を始める前段階で金銭のやり取りが発生する場合は、先に請求書を発行することもあります。
フリーランスエンジニアの請求書の作成方法

ここからは、フリーランスエンジニアが作成する請求書に記載すべき項目を紹介します。
国税庁のホームページによると、
- 双方の氏名
- 取引日時
- 取引内容
- 取引金額
が記載項目とされていますが、これらはあくまでも確定申告の際に必要となる最低限の内容です。(参考:No.6625 請求書等の記載事項や発行のしかた)
実際にはお互いに混乱が起きないよう、もう少し詳しく記載する必要があります。以下で請求書を作成する際に必要な項目を紹介します。
①クライアントや請求先の宛名
請求先の宛名は、会社名であれば「御中」、個人名であれば「様」を使います。部署名まで記載する場合は「〇〇〇〇株式会社 ××部署 御中」とし、個人名を記載する場合は「〇〇〇〇株式会社 (名前)様」とします。
なお、「〇〇〇〇株式会社」「株式会社〇〇〇〇」のように、どちらに株式会社がつくのかは社名によってさまざまです。順番が入れ替わることのないように、正式名称で記載するように注意してください。
②請求日
請求書を発行した日もしくは締め日を記載します。発行日が良いのか締め日の方が良いのか判断できない場合は、クライアントに確認しておくと安心です。
③請求書番号
請求書を管理する際に、後から自分で見てわかりやすいように番号を振り分けておきましょう。
④請求者情報
請求者(自分)の名前・郵便番号・住所・電話番号・メールアドレスなどの情報を記載します。場合によっては印鑑を押すこともあります。屋号を持っているエンジニアは、個人名の代わりに屋号を記載しても良いです。
⑤請求する金額
取引合計に消費税を加算し、源泉徴収税を差し引いた金額を記載します。この金額と内訳金額・消費税・源泉徴収額が合わなければ、どこかで計算が間違っていることになるので、しっかり確認しておきましょう。
⑥品目(取引の内容)
品目には、業務内容を記載します。クライアントに「これは何に対する請求なのか?」と思われないように、「システム設計費」や「システムエラーチェック費」など、できるだけ詳しく記載しておきましょう。
⑦単価・数量・金額
各品目の単価と数量と、それぞれの単価×数量の金額を記載します。ここではすべて税抜き価格で表記します。
⑧小計・消費税・合計
小計は、品目をすべて足した金額を記載します。消費税は、小計に消費税率をかけて算出した「消費税額のみ」を記載します。小計と消費税を足した金額が合計金額となります。
なお、源泉徴収がある場合は数字を赤文字にするか「-」を使ってわかりやすく記載しましょう。
⑨振込先
希望の振込先金融機関名・支店名・口座番号などを記載します。クライアントから金融機関を指定された場合は、可能な限り対応するようにしましょう。
フリーランスエンジニアが請求書を書く際の注意点

請求書は金銭授受に関わるため、間違えないようにしなければなりません。ここでは、請求書を書く際の注意点を紹介します。今後始まる「インボイス制度」についても解説しているので、参考にしてください。
源泉徴収の対象かどうかを確認する
フリーランスの場合でも、源泉徴収の対象となります。源泉徴収はあらかじめ所得税を差し引く制度のことですが、会社員の場合は個人の代わりに会社が納めてくれます。
フリーランスになると、クライアントである企業がフリーランスの代わりに納めることになり、納税分が支払額から差し引かれます。ただし、源泉徴収の対象となる報酬は決まっており、エンジニアの場合は対象外になることも多いのが事実です。
フリーランスエンジニアとして働くうえで源泉徴収に関連する業務で考えられるのは、デザインやコンテンツ制作も含めたWeb開発でしょう。
「プログラミング料」や「コーディング料」などは対象外となりますが、デザインや原稿を納品する場合は源泉徴収の対象となります。対象となる報酬かどうかは、国税庁のホームページにてご確認ください。
また、なかにはフリーランスの源泉徴収をおこなっていない企業もあるので、請求書を発行する前には必ず確認しておきましょう。源泉徴収をするかしないかは、契約書に記載されてることもあります。
振込手数料はどちらが負担するかを確認する
報酬が支払われる際に振込手数料が発生する場合は、その費用をどちらが負担するのかも確認しておく必要があります。一般的には、支払い側であるクライアントが負担することが多いですが、受け取る側が負担するケースもあるので注意しましょう。
受け取る側が負担する場合は、振込手数料を差し引いた金額で請求しなければなりません。振込手数料に関しては契約書に記載されていることもありますが、わからなければクライアントに確認しておきましょう。
請求書番号はかぶらないようにする
上記の「③」で紹介した請求書番号は、自分自身がどの取引の書類かを確認するための番号です。そのため、管理・特定しやすいようにすべて異なる番号を割り振らなければなりません。
どのような番号の付け方でも問題ありませんが、再発行の依頼を受けたときなどにすぐ対応できるように探しやすい番号をつけることが大切です。クライアントごとに取引コードを決めたり、発行順に割り振ったりと、自分なりのルールを考えておくとよいでしょう。
PDFに変換したものを送る
最近では請求書をメールするだけでOKということも多く、電子データのみのやりとりになることもめずらしくありません。その際、改ざんを防ぐためにも必ずPDFに変換したデータを送るようにしましょう。
「. doc」「. docx」「.xls」「.xlsx」の状態で送付すると、内容が編集できてしまいます。改ざんされることはなくても、クライアント側でPDFに変換しなければならず、手間をかけてしまうことになるので注意しましょう。
インボイス導入後は請求書に登録番号が必要になる
2023年10月1日より、インボイス制度が導入されます。インボイス制度は消費税の納税に関わるもので、売上が1,000万円以下のフリーランスは「課税事業者」になるか「免税事業者」のままでいるかを選ばなければなりません。
課税事業者になる場合は「適格請求書発行事業者」に登録し、消費税を自ら納めることを申告します。登録後には1人ずつに識別番号が割り振られるので、その番号を請求書に記載することになります。
インボイス制度がスタートする10月1日の時点で課税事業者になっておくには、2023年3月31日までに税務署への登録申請書の提出が必要です。インボイス制度については以下の記事で詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。
>>フリーランスエンジニアはインボイス制度でどんな影響をうける?どう対応すべき?
フリーランスエンジニアが請求書をラクに発行する方法

通常業務と平行して請求書を準備するのは、思っているよりも手間がかかるものです。そこで、少しでも楽に発行できる方法を2つ紹介します。以下の方法を使って請求書発行の負担を減らしましょう。
オンラインの請求書作成サービスを利用する
WordやExcelで請求書を作る方法もありますが、表作成の手間と時間を減らすなら、オンラインの請求書作成サービスを利用するとよいでしょう。代表的なサービスには「Misoca」や「freee」などがあり、どちらもビジネスに対応した請求書フォーマットが無料で用意されています。
源泉徴収の記載欄があったり、消費税を入力するだけで自動計算してくれたりと、簡単に請求書を発行できます。また、オンライン上で発行済みの請求書を一括管理できるので、請求もれや入金もれ防止にもなります。
フリーランスエージェントを利用する
2つ目の方法は、事務関連のサポートが受けられるフリーランスエージェントを利用することです。フリーランスエージェントはフリーランスエンジニアに最適な案件を探してくれるサービスで、契約や書類などの事務サポートをおこなっていることも多いです。
確定申告や職務経歴書・スキルシート作成など、エンジニア業務以外のサポートが受けられるので、「事務について何も知らない」というフリーランスでも安心。
エージェントを利用するだけで、仕事の獲得から条件交渉、契約書の締結、クライアントとの面談サポート、事務関連のサポートとたくさんのサービスが受けられます。
案件探しと充実のサポートを受けるなら「Bizlink」
フリーランスエージェントの『Bizlink』では、関連企業である「株式会社ビズリンクキャリア」や「一般社団法人ITフリーランス協会」と連携して教育制度や転職に関するサポートを提供しています。
また、事務の代行や福利厚生などの社会保険制度も構築しており、エンジニアが業務に集中してスキルを最大限活かせる仕組みを作っています。登録後の面談によりスキルや希望条件に合わせた提案をおこない、ミスマッチが防げるのも大きなメリットです。
今後のキャリア相談から将来を踏まえた案件にチャレンジすることもできるので、エンジニアとしてのステップアップも夢ではありません。これから独立するエンジニアも、すでにフリーランスとして活動しているエンジニアも、ぜひBizlinkの利用を検討してみてください。
まとめ
フリーランスエンジニアになると、会社員の頃にはやらなくてよかった事務作業が必然的に増えます。とくに請求書はお金のやりとりに関わる重要な書類のため、失礼がないようにしたいものです。また、今後適用されるインボイス制度によって請求書や税金の制度がこれまでとは変わり、情報の処理に追いつけない人も出てくるかもしれません。
税金などに関連する書類は正確に発行・保管することが避けられないので、不安を感じるエンジニアはエージェントの利用も検討してみましょう。フリーランスエンジニアになったものの、請求書の発行方法に悩んでいる方はぜひ参考にしてください。
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