フリーランスエンジニアを目指している人や、すでにフリーランスとして独立している人のなかには、
「開業届は出す必要がある?」
「いつ、どこに提出するの?」
と思っている人もいるのではないでしょうか。開業届という言葉から大掛かりな書類をイメージするかもしれませんが、実はそこまで複雑なものではありません。
しかし、開業届を出さないことで不利にならないよう、事前に知識を深めておくことが大切です。
そこで本記事では、フリーランスエンジニアの開業届の必要性や、メリット・デメリットについて解説します。開業届の提出を迷っている人は、ぜひ参考にしてください。
Contents
フリーランスエンジニアになったら開業届の提出が必須?
そもそも開業届とは、事業の開始や廃業、事務所の新設や廃止をおこなう際に税務署に提出する書類です。
所得税法で提出が義務付けられており、利益の有無に関わらず営利目的であれば、事業開始から1ヶ月以内に提出しなければなりません。
ただし、この期間内に提出できなかったとしても罰則などはなく、開業届を出さずにフリーランスとして働いている人もたくさんいます。
フリーランスと個人事業主の違い
開業届を提出する1番の目的は、税務当局に事業の開始を報告するためです。ここで気をつけたいのが、「フリーランス=個人事業主ではない」ということです。
フリーランスは働き方を指す言葉で、特定の会社に雇用されることなく働く人のことを表す呼び方です。
一方、個人事業主は継続して事業をおこなう個人として、税法上の区分を意味する言葉で働き方のことではありません。
フリーランスエンジニアが開業届を出すメリット・デメリット
フリーランスエンジニアが開業届を出すことには、メリットとデメリットがあります。届け出を迷っている人は、事前に両方を把握してから検討してみるとよいでしょう。
メリット
まずはメリットから解説していきます。
青色申告で節税できる
フリーランスエンジニアとして独立すると、年1回の確定申告で前年1月から12月までの所得を計算しなければなりません。
そのうえで所得税や消費税を税務署に、個人事業税を各都道府県税事務所に納めます。その際、開業届を出していなければ白色申告しか選択肢がありません。
開業届を出すことで青色申告ができるようになり、最大65万円まで控除額を引き上げられます。所得税は報酬から経費や控除額を差し引いた残りの金額にかかるため、控除額が高いことで節税につながります。
また、副業でも開業届を出すことは可能です。事業を開始したら、1ヶ月以内に提出するようにしましょう。
赤字が繰り越せる
青色申告では、事業が赤字の場合、最長3年繰り越せるというメリットがあります。赤字(損失)を繰り越せることで翌年以降に黒字化した場合に、損失分を差し引くことが可能になります。
つまり赤字になった年の翌年は、赤字分を差し引いた残りが課税対象金額となるのです。この「損失申告」は青色申告のみに適用され、白色申告では一部しか繰越せません。
赤字が繰り越せることで所得税を下げることができ、金額によっては大きな節税効果を得られるようになります。
屋号名義の銀行口座が開設できる
開業届には、屋号を記入する欄が設けられています。個人名とは別の呼称をつけたい場合、開業届に屋号を記入することで公的に認知され、事業専用の銀行口座が開設できるようになります。
仕事の報酬をプライベート用の銀行口座と一緒にしていると、入出金が把握しにくくなります。屋号名義の銀行口座が開設できれば、仕事とプライベートの2つを分けて管理できるためお金の流れがわかりやすくなります。
また、振込先が屋号になっていることで、個人名よりも事業に対する信用度が得やすいというメリットもあります。
小規模企業共済に加入できる
小規模企業共済とは、個人事業主や小規模な法人の役員が加入できる退職金制度です。加入することで退職や事業を廃止したときに、それまで積み立てた掛け金を共済金として受け取ることができます。
また、支払った掛け金は全額控除対象となるため、節税対策になるのもポイントです。「企業」という名前はついているものの、開業届を出して個人事業主となっている個人であれば加入できます。
逆にいえば、個人事業主になっていないフリーランスに加入資格はありません。小規模企業共済に加入して、自分自身に退職金を用意しておきたい人は開業届の提出が必要となります。
デメリット
フリーランスエンジニアが開業届を提出するデメリットは、失業手当がもらえなくなることです。
会社員エンジニアとして勤めていたときに失業保険に入っていた場合、退職後に「失業手当」が一定期間給付されます。
しかし、失業手当は「再就職する意思と能力があること」を前提としており、開業届を出していると再就職の意思がない(すでに仕事が決まっている)と見なされます。
そのため、開業届を出している場合は失業手当の給付を受け取ることができません。
ただし、失業手当の代わりに「再就職手当」がもらえるケースもあります。支給には条件があるので、開業届の提出のタイミングに気をつけましょう。
開業届の提出方法
前述のとおり、開業届は事業開始から1ヶ月以内の提出が推奨されています。ただし、期限日が土・日・祝日などの場合はその翌日になります。
また期限内に提出できなかった場合、あとからでも問題ありません。それでは、開業届の書き方や提出方法について詳しくみていきましょう。
開業届の書き方
開業届は、国税庁のホームページ「[手続名]個人事業の開業届出・廃業届出等手続」から取得できます。
①所管の税務署名
管轄の税務署名を記入します。わからない場合は、国税庁のHPで調べましょう。
②提出年月日
開業届を提出する日を記載します。
③納税地
納税地は「住所地」「居所地」「事業所等」の3つから選び、住所と電話番号を記入します。
住民票のある自宅で業務をする場合は「住所地」、別の場所であれば「居所地」、レンタルオフィスなどの住所を利用する場合は「事業所等」となります。
④上記以外の住所地・事業所等
自宅以外に住所がある場合に記載します。③で記入したのが事務所の住所であれば、自宅の住所を記入します。逆に上記で自宅の住所を記入した場合は、事務所の住所を記入します。
⑤氏名・生年月日・個人番号
氏名、生年月日、12桁の個人番号(マイナンバー)を記入します。
⑥職業
「システムエンジニア」「ネットワークエンジニア」などのように、具体的な職業を記入します。
⑦屋号
屋号は会社名のようなものです。屋号をつけるかつけないかは任意のため、必須項目ではありません。つけない場合は空欄で大丈夫です。
⑧届出の区分
「開業」に丸をします。
⑨所得の種類
「事業(農業)所得」を選択します。
⑩開業・廃業等日
事業を始めた日を記入します。
⑪開業・廃業に伴う届出書の提出の有無
開業届と一緒に提出する書類があれば、「有」に丸をつけます。青色申告を希望する人は、「有」に丸をしておきましょう。
⑫事業の概要
どのような事業をおこなうかを記入します。フリーランスエンジニアの場合、「ソフトウェア開発」「システム開発」などでよいでしょう。
⑬給与等の支払いの状況
従業員がいない場合は空欄で大丈夫です。
開業届を書く際の注意
開業届を書くときは、以下の3つに注意しましょう。
- 職業欄にフリーランスと書かない…「フリーランス」は職業ではありません。
- 印鑑は実印もしくは認印を使う…シャチハタはNGです。
- 屋号に株式会社などのワードは含めない…会社と認識させる名称をつけることは禁止されています。
また、開業届の控えは必ず保管しておきましょう。銀行口座開設や助成金申請の際に必要になります。
提出は郵送か持参のどちらかでおこなう
開業届が準備できたら、郵送・オンライン(e-Tax)・税務署に持参のどれかで提出しましょう。
提出の際にはマイナンバーの確認が必要です。郵送する場合はコピーをとり、返信用の封筒と一緒に送りましょう。
開業届と一緒に出そう!青色申告承認申請書
開業届を提出する際は青色申告承認申請書も作成し、同時に手続きするのがおすすめです。
後日の提出でも問題ありませんが、「あとでやろう」と思うと忘れてしまう可能性もあるので注意しましょう。
青色申告承認申請書には提出期限がある
青色申告承認申請書の提出期限は、青色申告を希望する年の3月15日までです。
期限内に間に合わない場合は、その年は白色申告になるので忘れないように提出しましょう。また、開業届と同じように期限が土・日・祝日と重なる場合は、その翌日が提出期限日となります。
青色申告承認申請書の書き方
①所管の税務署名と提出日
開業届と同じように、税務署名と提出日を記入します。
②納税地・氏名・生年月日・職業・屋号
こちらも開業届と同じように記入します。
③開始したい年度
青色申告を開始したい年度を記入します。
④事業所の名称や所在地
複数の店舗やオフィスを所有する場合に記入する欄です。フリーランスエンジニアの場合は空欄で大丈夫です。
⑤所得の種類
フリーランスエンジニアとしての所得のみであれば「事業所得」をチェックします。
⑥過去に青色申告承認の取消しを受けたことor取りやめをしたことの有無
初めて青色申告の申請をする場合は「無」を選びます。もし過去に承認の取消しや取りやめをしたことがあれば、年月日を記入しましょう。
⑦事業を開始した年月日
青色申告承認申請書を提出する年の1月16日以降に個人事業を開業する場合は、開業日を記入します。すでに開業届を出している場合は空欄で大丈夫です。
⑧相続による事業継承の有無
一般的にフリーランスエンジニアを相続することはありませんので、「無」を選択します。もし事業を継承する場合は、相続開始年月日と被相続人名を記入します。
⑨簿記方式
青色申告による65万円の控除を受けたい場合は「複式簿記」、10万円控除の場合は「簡易簿記」を選びます。
⑩備付帳簿名
青色申告をするために備付ける帳簿名をすべて選択します。青色申告の最大控除額65万円を受けるには、以下の項目すべてにチェックを入れます。
現金出納帳・売掛帳・買掛帳・経費帳・固定資産台帳・預金出納帳・総勘定元帳・仕訳帳
⑪その他
特になにもなければ空欄で大丈夫です。
⑫関与税理士
確定申告の代行を依頼する税理士がいる場合は、名前と連絡先を記入します。
開業届・青色申告承認書の提出と同時にやるべきこと
開業届と青色申告承認書の提出のほかにも、退職後にやるべきことはたくさんあります。ここでは、フリーランスエンジニアがおこなうべき手続き2つを紹介します。
国民健康保険への加入
フリーランスエンジニアになると、会社で加入していた健康保険から脱退することになります。
フリーランスが加入できる健康保険はいくつかありますが、なかでも国民健康保険に加入するのが一般的です。
前職の健康保険資格喪失日がわかる証明書と本人確認書類、マイナンバーを持参し、居住地の市区町村役場にて加入手続きをしましょう。
フリーランスエンジニアの健康保険については、以下の記事で詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。
>>フリーランスエンジニアが加入できる健康保険|保険料のおさえ方も解説
国民年金への加入
健康保険と同じように、フリーランスエンジニアになると年金に関する諸手続きも必要になります。元勤務先で厚生年金の脱退手続きをしてくれるので、退職の証明書類を持参し、市区町村役場の国民年金窓口へ行きましょう。
国民年金への加入は、退職日の翌日から14日以内となっています。国民健康保険の加入とあわせて、忘れないように手続きしておきましょう。
まとめ

開業届は提出しなくても罰則がないため、「出さなくてもいいかな」と思っている人もいるかもしれません。
しかし開業届は法律で提出が定められており、なおかつメリットも多くあります。必要な書類に記入していくだけなので、それほど手間はかかりません。
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